社会人になれば結婚式に出席する機会も増えます。ときには、友人代表や同僚としてスピーチを依頼されることもあるでしょう。結婚式のスピーチはハードルが高く、逆に場の雰囲気を壊してしまうことも珍しくありません。せっかくスピーチをするからには、場の空気に合った内容でしっかり話したいところです。そのためには、いくつかのコツを踏まえて内容を考えましょう。この記事では、結婚式のスピーチで失敗しない方法を解説していきます。
結婚式の祝辞を頼まれるのはどんな人?
スピーチを頼まれるゲストはさまざまです。まず、欠かせないのは「主賓の祝辞」でしょう。ゲストの中でもっとも目上にあたる人から祝辞をもらうのは通例となっています。
主賓に選ばれるのは会社の上司、恩師といった新郎新婦と深い関わりのある人物です。主賓はゲストを代表して、新郎新婦を激励したり、思い出を披露したりします。
一般的には、今後お世話になることも考慮して会社の上司が主賓としてのスピーチを行うことが少なくありません。
ただし、新郎新婦との付き合いの長さを優先するのであれば、学生時代の恩師に依頼される場合もあるでしょう。
そのほか、友人代表のゲストがスピーチを頼まれる場合もあるものの、進行上の都合から省略されるケースもあります。主賓扱いで招待された結婚式では、省略されることなくスピーチを行うことが一般的です。
スピーチは事前に頼まれますので、当日、即興で話すようなことはありません。とはいえ、大勢の前で話すのは緊張しますし、即興だと内容も軽くなりがちです。依頼を引き受けた時点で、祝辞に相応しい内容を考えるように努めましょう。
祝辞の基本的な構成について知っておこう
結婚式の祝辞は基本的な流れがほぼ決まっています。
流れを押さえたうえで、ところどころで個性を出すようにしましょう。ここからは、祝辞の構成について解説します。
まずは簡単に自己紹介・祝辞を
祝辞では、最初に「僭越の意」を伝えるのがマナーです。僭越の意とは、ほかのゲストに対して敬意を表するための台詞です。
主賓のほかに、社会的地位が高いゲストが参加していることもあるでしょう。また、主賓よりも年上のゲストがいる可能性もあります。
それにかかかわらず、何事もないかのように主賓が祝辞を述べ始めると、ほかのゲストに失礼です。まずは、「僭越ながら祝辞を述べさせていただきます」と前置きしてから、本題に入りましょう。
主賓の祝辞を行う際には、司会者から軽く紹介があります。しかし、自己紹介から挨拶を始めるのが無難です。
細かすぎる説明はいらないものの、新郎新婦のどちらの関係者でどんな接点があるのかを知ってもらいましょう。
そして、くれぐれも自己紹介が長くなりすぎないよう注意します。結婚式の主役はあくまで新郎新婦です。長い自己紹介は、主賓が目立ってしまうことになりかねません。自分のことを語りすぎず、新郎新婦に花を持たせるようなスピーチにしましょう。
その後、お祝いの言葉へと移っていきます。祝辞の間は、新郎新婦とその家族は起立して聞いてくれています。終わり次第、着席を促してあげるのが親切です。
新郎新婦のエピソードを盛り込んで
祝辞では前置きが終わってから、新郎新婦とのエピソードトークに入っていくのが定番です。エピソードを選ぶ際には、新郎新婦の人柄が伝わるようなものにしましょう。
ある状況下で新郎新婦がとった行動、口にした台詞をできるだけ具体的に述べていきます。情景が思い浮かぶような描写をいれると、ゲストは話に引き込まれるでしょう。
話し方のポイントは何よりも「新郎新婦を褒める」ことです。主賓が新郎側の関係者なら新郎を、新婦側なら新婦をとにかく良く言ってあげます。
「こんなに素晴らしい新郎だから、新婦は彼を選んで正解だ」という着地点を目指すため、なるべくネガティブな要素は避けて話しましょう。
ただし、スピーチのテクニックとして、あえて新郎新婦の失敗談を取り入れるのもひとつの方法です。適度な失敗談は当人の人間味を伝え、場の共感を呼ぶからです。
ただ、度を過ぎた失敗談は悪口に聞こえて場の空気を重くします。何より新郎新婦に失礼なので、冗談に聞こえるくらいの失敗談を選びましょう。
さらに、下品なネタや暴露も厳禁です。こうした話題は内輪の集まりでは盛り上げてくれることもあるものの、不特定多数のゲストに通用するとは限りません。
第一、家族の前で話すのは相応しくないでしょう。そのほか、職場でのエピソードを話すために会社説明をするのも要注意です。
長々と会社の話をしても、ゲストは退屈してしまいます。簡潔に業種や業態を伝えるに留めましょう。
最後は結びでかっこよく締める
祝辞では、「結び」が非常に大切です。途中のエピソードトークが上手くいったとしても、結びが弱ければ人々の心に響きません。インパクトを残しつつ、新郎新婦への思い入れが見える言葉を考えましょう。
ポイントとしてはまず、「はなむけ」の言葉を贈ることです。人生の先輩として、新郎新婦のためになるような話をします。厳しすぎる言葉は高圧的に見えるので避け、優しくて頼もしく映るように心がけましょう。
はなむけの言葉は主賓の実体験に基づくものでもかまいません。目上の人間から経験則を教わるのは貴重な機会となるからです。
ただし、思いつかない場合は名言やことわざを引用するのもいいでしょう。すでに語り継がれている言葉を持ち出すと、説得力が漂います。さらに共感を集めたいなら、ヒット曲の歌詞や映画の台詞を借りてくるのも良いでしょう。
そして、最後に「改めてお祝いを述べて終わりたいと思います」と宣言し、シンプルな「おめでとう」の言葉を伝えましょう。これで、祝辞の流れは締めくくられます。
祝辞では下品な内容でない限り、主賓の素直な気持ちを伝えてもかまいません。ただし、「子ども」についての話題は避けるようにしましょう。
「早く子どもができるといいですね」のような話題は思いやりがあるように見えて、新郎新婦へのプレッシャーになりかねません。
また万が一、子どもができなかったときに重くのしかかってきます。新郎新婦のライフスタイルによっては子供を必要としていないケースもあるため、口にしないのが無難でしょう。
品格の高いスピーチを行うコツとは
祝辞では笑いをとったり、感動を誘ったりすることも重要です。しかし、もっとも意識したいのはゲスト代表としての品格です。
数多くのゲストの中から選ばれた自覚を持ち、主賓に相応しい上品なスピーチを用意しましょう。
主賓にふさわしい正しい敬語を使って
ゲスト代表の品格を示すためには、「敬語」は重要です。
主賓の第一声からすでにゲストは耳を傾けています。乱暴な言葉づかいをすれば、一気に会場の空気は冷え切ってしまいます。
スピーチの流れ次第で、あえてくだけた口調になるのは悪くありません。しかし、人前に立つ以上、基本的には敬語で話すべきです。
何より、新郎新婦を引き立てる意味でも丁寧で正しい日本語を心がけましょう。
たとえば、最初に「ご紹介してもらった~です」と言うだけで、すでに年長者は言葉のまずさに気づきます。正しくは「ご紹介にあずかった~です」なので、挨拶や自己紹介は定型的なフレーズを覚えておくことがポイントです。
そのほか、「お2人」を「2人」と呼んだり、「ご結婚」を「結婚」と言ったりするなど、丁寧語が抜けるのはありがちな失敗です。
ふだんは上司と部下の関係であるため、敬語に切り替えるのが難しいようならスピーチ原稿を作っておいて暗記するのもいいでしょう。
また、祝辞の定番ともいえる台詞も覚えておくのも良いでしょう。
「このたびはスピーチの大役を引き受けることになりまして、まことに僭越ながら申し述べさせていただきます」のような一言があるだけで話し方に威厳が宿ります。
そして、最後まで気を抜かずにうっかり言葉が荒れないよう注意して喋りましょう。
忌み言葉や重ね言葉を避ける
敬語のほか、「忌み言葉」や「重ね言葉」もスピーチでは避けましょう。これらの縁起が悪い言葉の中には、あまり意識せずに使ってしまっているものもあります。
スピーチを考える際は忌み言葉や重ね言葉と照らし合わせ、事前に推敲しておくといいでしょう。
使ってしまいやすい代表的な忌み言葉が、「帰る」や「とんでもない」などの単語です。普通の文脈で使えば特に問題がない言葉だけに、うっかりスピーチに組み込んでしまう人も少なくないでしょう。
また、「涙」や「短い」なども忌み言葉にあたります。「感動して涙が出そうです」や「月日が絶つのはあっという間で短かったですね」といったフレーズを言わないように注意しましょう。
一方、重ね言葉とは同じ響きの単語を繰り返すことです。
「結婚を繰り返してしまう」という文脈につながるので、結婚式では禁句とされてきました。「いろいろ」「たびたび」「またまた」といったフレーズが重ね言葉です。
重ね言葉は日常会話で頻出しており、癖になっている人も少なくありません。そのため、意識しなければ結婚式のスピーチでも口にしてしまいがちです。
ただし、「どんどん」のような重ね言葉は好意的な文脈以外で使われることが少ないので、スピーチに登場することもあります。
なお、重ね言葉以外でも「再び」や「またもや」などの単語は使わないほうが良いでしょう。
長すぎるのはダメ!ほどよい長さでまとめる
結婚式のスピーチでは、つい長く話してしまう人もいます。主賓として立っているからには、内容の濃い話をしなくてはいけないとの思いが働くからです。
また、他人に注目されている状況がうれしくなって、話しすぎるケースもあるでしょう。しかし、長すぎる結婚式のスピーチは周囲の負担となります。
主賓が話している間、ゲストは料理にも手をつけず耳を傾けなければいけません。当然、その間は会話も止まっています。
スピーチが長引くほど、「早く終わってほしい」との気持ちは強くなっていくでしょう。それに、祝辞の間は新郎新婦やその家族が立ち続けているのも忘れずにいたいポイントです。
一方で、短すぎるスピーチも手抜きのような印象を与えます。新郎新婦からすれば、せっかく敬意を表して祝辞を依頼したのに拍子抜けです。
ある程度の内容は用意しておかないと、主賓の大役を果たしたことにはなりません。主賓のスピーチは3~5分ほどに収めるのが賢明です。
話したい内容を取捨選択し、詰め込みすぎないスピーチを考えましょう。原稿用紙3~4枚がおおよその目安です。
そして、早口になりすぎず、ゆっくりかみしめるようにスピーチをしましょう。テンポが速いと聞き取りにくいだけでなく、神経質な印象も与えます。
焦らず話しても伝えきれるくらいの長さでスピーチを準備しておきましょう。
事前の予行練習で万全の準備を
祝辞のスピーチで失敗しないためには入念な準備を積み重ねましょう。まずは原稿を作成し、忌み言葉や重ね言葉を修正します。正しい敬語が使われているかも見直しましょう。
推敲の際には、黙読するだけでなく声に出して読むのが賢明です。口にして違和感のある文章は、文法や日本語表現が間違っている可能性があるからです。
さらに、話しやすい言葉を選ぶことでスピーチの完成度は高まっていきます。何回も繰り返しスピーチ練習をして内容を頭に入れます。
もちろん、本番で原稿を見るのもマナー違反にはあたりません。ただし、原稿を見るよりは何もなしに話したほうが、主賓の品格を保てるでしょう。
スピーチ練習では自分の声を録音し、聞き返してみるのが効果的です。
客観的に自分の話し方と向き合えるので、欠点を冷静に探せます。発声が悪かったり、ろれつが回っていなかったりする箇所があれば素直に直しましょう。なお、腹から声を出すよう心がけると威厳のある話し方ができます。
そうやって何回も練習をすれば自信に変わり、本番でも緊張しにくくなるでしょう。
それでも、いざ人前に出ていけば頭の中が真っ白になる危険もゼロではありません。そこで、カンペや原稿を忍ばせておくのが得策です。
本当に忘れてしまったときは救われますし、懐にカンペがあるだけで安心感を得られるからです。
新郎新婦に喜ばれるスピーチを目指して
結婚式の祝辞は大役であり、大きな責任がのしかかってきます。もしも話す内容に迷ったら、新郎新婦やゲストの顔を思い浮かべることが大切です。
式場にいる人たちの心に届き場が盛り上がるスピーチを思い浮かべると、自然に原稿はできあがります。そのうえで、言葉づかいや発声など細かい点を練習によって修正していきましょう。
祝辞は誰でもできる役目ではありません。新郎新婦は、相手が主賓に相応しいと思っているからこそ依頼をしてくれるのです。
結婚式当日では新郎新婦の期待を裏切らないよう、品格のあるスピーチを行いゲストを代表してお祝いの気持ちを伝えましょう。