婚姻届には記入欄がいろいろあり、書き方に迷ってしまう場面もあります。特に、「同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯のおもな仕事」の欄については頭を悩ませる人が多いようです。そこで、この記事では、婚姻届をスムーズに提出するための書き方や職業欄についての詳しい内容、書き損じてしまったときの対処法などについて紹介します。
婚姻届にミスがあった場合のリスクとは?
婚姻届には、役所で発行しているスタンダードなものからキャラクターが描かれたもの、デザイン性の高いものまでいろいろあります。
どのタイプのものを使用するにしても、婚姻届けは市区町村役場に提出する公式な書類なので正しく記入しなくてはなりません。
ミスがあった場合、提出時に修正することも可能ですが、状況によっては書き直して後日提出し直さなければいけないこともあるので注意が必要です。
たとえば、証人が婚姻届の提出に立ち会うことはあまりないでしょう。そのため、証人欄にミスがあった場合は再度書き直してもらわなくてはならず、その日の提出は困難になります。
また、仕事の都合などによって早朝や夜間など時間外に婚姻届を提出する場合、記入に不備があるかの確認は一切なく、その日は書類の提出を受け付けるのみです。
ですから、ミスがあった際は日を改めて再度役所に出向き、訂正することとなります。ただし、時間外に提出し不備があった場合でも、最初に提出した日を届け日としてくれるケースが多いようです。
結婚式を挙げた日を結婚記念日にする人以外に、婚姻届を提出した日を結婚記念日とするカップルも多く、「この日に提出しよう」と入籍日を決めている人たちもたくさんいます。
そのようなことからも、普通の書類の提出とは違ったプレッシャーが婚姻届にはあるのです。
もし、記入の不備によって後日提出し直しとなれば、入籍日も違ってくるため落ち込んでしまう人もいるでしょう。
中には、お日柄にこだわって、「せっかく大安の日を選んだのに!」とつぎの大安を待つ人もいます。
一方、入籍予定日が付き合った記念の日であったりお誕生日であったりと、思い入れのある日付だった場合は、1年先に延ばすかその日付を諦めるかしか方法がないためショックが大きいでしょう。
希望の日に間違いなくスムーズに入籍するには、ミスのない記入が必要となります。
「同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯のおもな仕事」欄はどう解釈すればいいの?
婚姻届には、「同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯のおもな仕事」を記入する欄があります。
これは、夫婦が同居をする以前のそれぞれの「世帯」で1番収入が多かった人について記入するということです。
「世帯」とは、1つ屋根の下に住む家族のことだと思ってよいでしょう。
たとえば、同居前は1人暮らしをしていた人は自分自身の仕事を、家族と実家に住んでいた人は家族の中で1番収入が多い人の仕事を選ぶことになります。
実家で暮らしていた人の場合、親が一家の家計を支えていることが多いので親の仕事内容を選ぶ人が大半です。
それから、「同居を始める前」とは、読んだままの通り解釈してかまいません。
4月1日に同居を始めた夫婦は、同居する前、つまり3月31日までの世帯状況を書くこととなります。
婚姻届を提出する人の中には、まだ同居をしていないカップルもいるかもしれません。その場合は、現在の世帯状況に合ったものを選べばよいでしょう。
6つの職業について詳しく解説!
「同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯のおもな仕事」欄に記載されている1.~6.の仕事について1つずつ詳しく解説します。
まず、「1.農業だけまたは農業とその他の仕事を持っている世帯」とは、農家のみで生計を立てている、もしくは兼業農家ではあるが農家の収入が主である世帯のことです。
農家が行う仕事には、野菜や花を作る田畑を使った農業はもちろん、牛や豚などの有用動物を育てる農業、さらに、牛やヤギのミルクを使った酪農などいろいろな種類があります。
これらのような農業で生計を立てる人は1.にチェックを入れるのが正解です。
中には、農業をやりながら会社員として企業に属している人もいるでしょう。そのような人も、農業の収入が主な収入ならこの欄にチェックを入れます。
つぎに、「2.自由業・商工業・サービス業等を個人で経営している世帯」は、個人事業で生計を立てている世帯です。
小説家やデザイナーなどさまざまな分野においてフリーランスで仕事をしている人や飲食店を経営している人などはもちろん、林業や漁業関係者、弁護士や医者などもここに含まれます。
小学生の憧れの職業の1つでもある「ユーチューバ―」もこの2.に当てはまります。
そして、「3.企業・個人商店等(官公庁は除く)の常用勤労者世帯で勤め先の従業員数が1人から99人までの世帯」は、従業員数が1人から99人までの一般的な企業に勤めている、いわゆるサラリーマンの世帯を指します。
この「常用労働者」という聞き慣れない言葉については、以下で詳しく解説します。
つづいて、「4.3にあてはまらない常用勤労者世帯及び会社団体の世帯」は、基本的には3と同様、会社員として働くものですが、会社が抱える従業員数が異なります。
こちらは従業員数が100人を超える一般的な企業に勤めている人の世帯です。宮内庁に勤務する人や公務員もこちらに入ります。
なお、上記の3.と4.に出てくる「常用勤労者」とは簡単にいうと従業員のことですが、従業員を「常用勤労者」と呼ぶにはつぎのような定義があります。
それは、期間を定めず毎日働いている、または1カ月以上勤務している、あるいは2カ月以上継続して月に18日以上出社している人かどうかです。
そのため、パートやアルバイトは含まれません。ただし、企業によってはパートの人を常用労働者としているケースもあるので、わかりにくい場合は勤務先に尋ねてみると間違いないでしょう。
最後に、「5.1から4にあてはまらないその他の仕事をしている者の世帯」は、アルバイトやパート、勤務期間が1年未満の契約社員などとして働いている人の世帯、
「6.仕事をしている者のいない世帯」は年金の受給のみ、あるいは仕事をしていない人の世帯です。専業主婦(主夫)や家事手伝い、就活中の人も6.に含まれます。
「夫婦の職業」欄の書き方を紹介!
婚姻届には、「夫婦の職業」欄の記入方法がありますが、実は、こちらを記入しなければならないのは国税調査の年に婚姻届を提出するカップルのみです。
そのため、各当しない年に婚姻届を提出する場合は空欄のまま出すことができます。では、この国税調査がいつ行われるかというと、西暦で5の倍数となる年です。
ですから2015年、2020年、2025年ということになります。該当の年に婚姻届を提出するカップルは、以下の「厚生労働省編職業分類」から自分たちの仕事を探して職業欄に記入しましょう。
・厚生労働省編職業分類
「A.管理職」
国会議員、地方公共団体議会議員、知事などを含む管理的公務員や法人・団体の役員などを指します。管理職の中には、ホテル支配人や特別養護老人ホーム施設長なども入ります。
「B.専門・技術職」
さまざまな分野での研究者や製造技術者、情報処理・通信技術者のほか、医療関係者や法律、教育関連の職業など専門的知識を要する職業です。
雑誌の編集者や学校の先生、芸術家などのほか、スポーツ選手や俳優、ダンサーなども専門・技術職に位置づけられています。
「C.事務職」
一般事務や営業事務をはじめとした、各企業における事務職全般です。病院や診療所などで働く医療事務も含まれます。
「D.販売職」
コンビニやガソリンスタンドの店長や不動産仲介・売買人、営業員など、商品を販売する仕事が含まれます。
訪問販売員やお祭りの屋台を営業する露店販売員などもこちらです。そのほか、生命保険代理店主、保険代理店主も該当します。
「E.サービス業」
家政婦やベビーシッターなどの家庭生活支援サービスを行う人や、訪問介護員や施設介護員を含む介護サービスを提供する人が該当します。そのほか、理美容師や調理人、レストランの店長などが挙げられます。
「F.保安職」
自衛官や司法警察職員以外に、警備員やプール監視員、駐車監視員などもこちらに含まれます。
「G.農林漁業職」
農業を行う農家の人や林業で生計を立てる人、漁業に関わる仕事をする人をいいます。漁労船の船長・航海士・機関長・機関士なども含まれます。
「H.生産工程・労務職」
印刷業や機械の組み立て、食品加工、自動車整備の仕事などを指します。金属や皮、プラスチック製品などの製造や加工処理もここです。
衣服・繊維製品製造工には、ドレスメーカーや紳士既製服仕立工、衣服寸法直し人も含まれます。
「I.運輸・機械運転の職業」
鉄道や自動車の運転手はもちろん、ビル設備監理員も当てはまります。船長(漁労船を除く)やパイロットもここに入ります。
なお、実際に該当する車両を運転する人以外に、駅構内の信号係(鉄道)や操車係、連結手、さらに、観光バスガイドも含まれます。
「J.建設・採掘の職業」
建設や電気工事にかかる仕事をする人や採鉱作業員やじゃり・砂・粘土採取作業員をいいます。この中には、トンネルを作ったりダムを建設したりする人も含まれます。
「K.運搬・清掃・包装業」
手紙や荷物を集配する仕事やビル清掃の仕事、 ラベル・シールの貼付作業をする仕事です。販売業やサービス業と間違われてしまいそうですが、ピザを宅配する人もこちらに該当します。
なお、無職の人は、空欄ではなく「無職」と記入しましょう。
このように、厚生労働省では職業を細かく分類しています。
国税調査が行われる年には、最新の書き方がインターネット等に発表されますので調べてから記入することをおすすめします。
間違えて記入してしまった場合の対処法
結婚は、人生において大きな選択です。それに伴う婚姻届の記入に緊張してしまう人もいるでしょう。そのため、書き間違えてしまう人も少なくありません。
中でも実際に多いのは、戸籍の名前と違う漢字を書いてしまった人や届出人欄の名前に旧姓ではなく新しい名前を書いてしまった人、また、住所を省略して書いてしまった人などです。
住所や名前は戸籍に記載されたものと同じ表記や内容で書かないと記入ミスの扱いとなり受理されないので注意が必要です。
間違えたときのために、余分に何枚か書類を用意しておくのもよいでしょう。しかし、婚姻届は記入欄も多いので何度も書き直すのは大変な作業です。
そのため、間違えた際に修正ペンや修正テープを使いたくなってしまう人もいるでしょうが、この方法はおすすめできません。
なぜなら、公式な書類では修正ペンや修正テープを使用したものは受理されないからです。婚姻届にも同様のことがいえるので、この場合は二重線で消して訂正印を使いましょう。
訂正印を使用した修正方法は以下の通りです。間違えて書いてしまった部分に二重線を引き、その上から訂正印を押します。
そして、その欄の余白部分に正しい内容を書き直します。役所によっては、「〇字追加〇字削除」と書くように言われるケースもありますので、その場合は提出時の指示に従いましょう。
婚姻届を提出する際にミスが見つかり、その場で訂正を求められることもあるので提出日には訂正印を持参すると安心です。
また、提出後、役場の人がミスを訂正する際に必要となるのが「捨印」です。
捨印は、届人欄に押印する印鑑と同じものを欄外に押したものをいい、この捨印があることによって、提出後にミスが発覚した場合の訂正を役所に任せることができます。
つまり、捨印は「訂正があったらそちらにお任せします」という意思表示というわけです。
これは、婚姻届の証人欄にも有効なので、証人欄右側の欄外にそれぞれの証人に捨印をもらうことで証人欄にミスがあった場合でも訂正が可能になります。そのため、証人に署名押印をお願いするときは捨印も押してもらっておくと安心です。
なお、親世代には、婚姻届に二重線を引いたり訂正印を押したりすることを縁起が悪いとして嫌う人もいます。
自分の親や相手の親、さらに、親戚などにそのような人がいると書き直した方がよいと言われる可能性もあるので、親や親戚に証人欄の記入のお願いをする際は余裕をもったスケジュールを立てると焦らずに済むでしょう。
正しく記入してスムーズに入籍しよう!
大事な書類であるうえ提出日にこだわりをもつ人も多い婚姻届は、正しく記入することが大切です。
記入ミスがなければスムーズに処理され、ふたりにとってその日が結婚記念日、もしくは入籍記念日になるでしょう。
どうしても心配な人は、入籍日の前に役所に出向き、書類を確認してもらう方法もあります。また、希望日にスムーズな入籍が叶うよう時間に余裕をもった記入がおすすめです。