ご祝儀袋といえば、外袋の表書きマナーや受付での渡し方など、目に見える部分でのマナーだけに注目が集まりがちですよね。でも実は、華やかなご祝儀袋の中袋にも、お札の入れ方やのり付け、書き方といったマナーが存在します。ご祝儀袋を開封したご新郎ご新婦に「さすが」と思わせる、大人なら知らないと恥ずかしい中袋マナーを紹介します。
中袋にはご祝儀の金額と名前を記載する
中袋は、「慶びが重なるように」という意味が込められていて、ご祝儀の外袋と重ねて使うのがお祝いのマナーとされています。
中袋は白無地金封が一般的です。そのため、中袋にカラーの封筒を使用したり中袋を使用しないご祝儀は、マナー違反になります。
もし、購入したご祝儀袋に中袋が付いていなかった場合や、中袋を破ってしまったり書き損じてしまったりした場合には白無地の封筒や白和紙などで代用するようにしましょう。
まず、中袋の表面にはご祝儀に包んだ金額を書きます。ちなみに、中袋の種類によっては裏面に金額を記載する欄が設けられているものがあり、その場合は裏面でも良いとされています。
書き方は「金~萬圓」となり、包んだ金額の数字も旧漢数字で記載しましょう。
一は壱、二は弐、三は参というふうになります。旧漢数字の使用は、数字や簡単な漢数字で記載した場合に起こり得る、数字の書き換えといった事件を未然に防ぐ効果もあるといわれています。
金額を書き終わった後に気になるのが「也」をつけるかどうかではないでしょうか。「金~萬圓也」とした方が正式な書き方のように感じられますが、金額が10万円未満であれば、特に書かなくても問題はありません。
次に、裏面には郵便番号、住所、氏名を書きます。封筒で手紙を送るとき、自分の住所氏名を記載するのと同じように中袋裏面の左下が良いとされています。
これは、ご祝儀袋を開封した際に外袋と中袋がバラバラになってしまっても誰がいくら包んでくれたのか分かりやすくする、ご新郎ご新婦への思いやりです。
また、ご祝儀袋をもとに年賀状やその後の出産報告等のための住所録を作成する人もいるので、名前だけでなく郵便番号や住所まで記載するのがより丁寧な心遣いとされています。
表面の金額はともかく、住所や氏名となるとついボールペンや万年筆で書きたくなるところですが、それらの筆記用具はマナー違反です。ご祝儀袋の外袋で使用したものと同じ筆記用具を使いましょう。
外袋の表書きでは毛筆か筆ペンの使用が一般的なマナーです。上手いか下手かよりも、心を込めて丁寧に書くことで祝福しようという心の思いが込められます。
中袋にはのり付けしなくてもいい!
市販のご祝儀袋についてくる中袋は、たいて封筒型になっていますよね。そのせいか、入れたお金が落ちないように盗まれないようにと、のり付けをして封を閉じたほうが正式なマナーではないかと思っている人が多いようです。
実は、中袋にのり付けする必要はありません。なぜかというと、もともと封筒型の中袋が普及する前は、奉書紙といって高級な和紙などを使用してお金を包んでいたため、のり付けの習慣はなかったからです。
奉書紙が簡略化されて封筒型になった中袋の封は、線にそって折り曲げてお金が落ちないようにするために使っておきましょう。
封をしない理由のひとつとして、ご新郎ご新婦への心遣いという意味合いもあります。結婚式や披露宴当日、大量のご祝儀袋を開けて中身を確認する際、中袋がのり付けされてしまっていると開封に手間がかかるためです。
開封しようとしてお札までやぶれてしまった、というようなお祝いの席では避けたいトラブルの素にもなりかねません。
ただし、例外もあります。市販されているご祝儀袋のなかには、中袋用の封留めシールが付属されているものがあるのですが、これは、のり付けとは違い手で簡単にはがせるものなので使っても問題はないとされています。
中袋に入れるお金のマナーについて知りたい!
中袋には、ご祝儀としてのお金を直接入れることになりますが、ただ入れれば良いというわけにはいきません。お札の種類や向きにもマナーがあるのです。
中にいれるお金は、使い古されたヨレヨレのお札や綺麗だけど折り目が付いているお札を避けて、新札を準備しておきます。
お祝いに新札を使うのには、「新しい門出」を祝う意味や「この日を楽しみに前もって準備しておいたよ」という心待ちにしていた気持ちを表す意味が含まれています。
新札を準備し忘れた場合には、ピン札(すでに使用されているが折り目のない綺麗なお札)を入れても問題はありませんが、出来る限り事前に銀行または郵便局の窓口、銀行ATMなどで両替しておくようにしましょう。
入れる金額は、「夫婦2人が別れないように」の意味を込めて、2で割り切れる偶数の金額は避けるのが一般的です。ただし、「9」は苦しいを連想させるため、奇数でも避けるべき金額となっています。
また、現代では「2」は夫婦ペアの数字として縁起が良いとされ、ご祝儀でもよく見かける数字になっています。
とはいえ、30代40代と年齢が上がるにつれご祝儀金額も上がるのが世間の流れですから、夫婦ペアの2万円のご祝儀ですませるのは何歳までが良いのか、下調べしておいた方が良いかもしれません。一般的には、身内以外の方へのご祝儀は3万円が相場となっています。
用意した新札を中袋に入れる際には、お札の表側(肖像画がある面)が上になるようにします。金額の書かれた表面を自分に向けて、左手に中袋を持ち右手でお札を取り出したときに、最初にお札の肖像画が出る向きで入れるのが正しいマナーです。
仕上げにご祝儀袋でしっかり包もう
中袋ができあがったら、ご祝儀袋で包んで仕上げましょう。ここで注意すべきなのは、上包みの折り方です。
中袋にお金が入っていることを確認したら、外袋の上包みで包みます。向きは、どちらも表面同士、裏面同士になるようにセットすれば問題ありません。
それから上包みを折り包んでいくのですが、一般的には左から折りたたんでから右を折りたたむデザインになっているので、そこは簡単にクリアできるはずです。
その後、上下を折りたたむ際は必ず上を折ってから下を折ります。上包みの裏面をみて、下の折り返しが上になるよう仕上げなくてはなりません。
結婚式などのお祝いの席では、「何事も上向きになるように」という意味があるためです。間違えて上の折り返しを上にしてしまうと、お葬式や法事など、不祝儀用の包み方になってしまいます。間違えても反対に折りたたまないよう、お祝い事は嬉しくて万歳をするというイメージで覚えておくと良いでしょう。
そこまでできれば、あとは袱紗もしくは金封袱紗に包んで当日の受付で祝詞とともに渡すだけですね。
中袋までマナーを守ってこそ大人のふるまい
ご祝儀袋というと、どのようなものを購入するべきなのか、あるいは名前の書き方、受付での渡し方などといった人目につきやすい部分のマナーに注目しがちです。
つい目につくところのマナーを重要視してしまいがちですが、実は目立たない存在の中袋にも多くのマナーが存在しています。
書き方やお金の入れ方、包み方などは、当たり前のようでいて間違えやすい部分でもあるので正しい方法を覚えておきたいものです。
表向きのマナーだけで済ませず、このような細かい部分のマナーにまで気を使えるようになってこそ大人の仲間入りと言えそうですね。
多くの人に見られるのは上包みの外袋のみですが、お祝いを受け取るご新郎ご新婦は確実に中袋まで目を通しています。正しい中袋マナーを身につけて、ご祝儀袋からでも心からの祝福を伝えられたらどんなに素晴らしいことでしょう。